ここは私にとって(誰かにとっての)天国

長いお盆休みの方々もそろそろそんな時間の底が見えてきた頃かな、この1週間はずっと忙しかったけれど、今日のお昼はかなりお客様が少なかったです。

(でも、jazz inn LOVELYでの森山威男クインテット 2Daysに出演のアコーディオン佐藤芳明さんはお昼ごはんを食べに来てくださったけどね♪)

夕方もお客様少なめで、そして夜。

それまではずっと閑散としていたのですが夜には嬉しいことにお客様がいっぱいに。

奥のテーブルでは、5年ほど前に何度か来てくれたある音大を卒業した女の子たちが久々に集まってくれました。実はその中の一人が誕生日で、私は最後にサプライズでケーキを出す予定になっててちょっとそわそわしていました。

カウンターにはそれぞれお一人で来てくださった女性たちがいつしかお話を始めています。映画が好きな方や本が好きな方、よく来てくださる歌人の野口あや子さんも。

他のテーブルにも初めて来てくださった方もいれば何度目かの方も。


21時を少し過ぎた辺りからひとり、またひとりとお帰りになり、22時に最後のお客様をお見送りし、私たちは洗い物をして店を片付けたあと、軽く食事を取って、そして店を出ました。23時頃です。

店から外へ一歩出ると、8月18日土曜日の名古屋駅西、椿町はまだまだ賑やかです。昔はこんなことはなかったのにな。以前、夜はもっと暗かったけど、ここ数年で町の様相は随分と変わりました。たくさんの人たちが二軒目の店を探しているのかそぞろ歩いています。この時間はそういった人たちを狙った客引きもとても多いです。

「ね。どこ行くの?そっち行っても店なんてどこもないよ。こっちにいい店があるよ」

と3人組の女性に客引きの若い男が声をかけています。

え、そっちは店が何もないって? いやいやチェーン店のY屋も個人店のT店も居酒屋IもT寿司もいっぱいあるし、その向こうにもいっぱいあるのに、しれっとそういう嘘を言うなんて怖いわ・・・。

また路上の横断歩道の隅っこで座り込んで今しがた終わったばかりらしい合コン相手の悪口を言ってる若い男の子とか、大きな音楽を流しながら路駐してるオープンカーとか、なんていうかため息。なんていうか疲れるなあ。

そんなとき、手前味噌ですが、さっきまでのうちの店、マタハリの店内のことを思い出すんです。や、ホント、手前味噌ですけどね、うちは天国だなあって思ったんです。懐かしい友達と再会して笑いあってたり、映画の後の時間をおひとりでゆっくり味わってたり、見知らぬ人とのお喋りを楽しんだりと、穏やかで、楽しくて、激しい言葉や人を詰る言葉やトゲトゲした空気や危険なものはどこにもなく、窮屈でもなく、もうほんとうに天国じゃないですか。

あちこちに僅かに不穏さを孕んだ夜の街を歩きながら、私の店は私にとって天国のような場所だ。そして誰かにとっても「ここは天国のような場所だ」と思ってもらえるといいな、とそう思いました。

ロジウラのマタハリ春光乍洩

いい音楽といいごはんのカフェ。 名古屋市中区大須の小さなアジアンカフェです。